農場づくり と畜/WWOOF/豚の運搬

農場づくり と畜/WWOOF/豚の運搬

来週の月曜日はと畜の日です。

一頭の豚を出荷します。

日本のルールでは

家畜を自分で殺し、お肉にして販売することはできません。

許可を得た家畜の解体施設で殺す(と畜)ことが定められています。

北海道の場合

北海道畜産公社がその主たる場所であることは以前ご紹介いたしました。

私は個人と畜の申請をして

北海道畜産公社へ豚を輸送し

同場所でと畜してもらって

検査を受け

販売できるサイズまで小さく加工を依頼し

ようやく自分のお店で販売することができるようになります。

 

ここで問題になるのは

輸送要領です。

農協などで運搬する一般の農家などは回収用の家畜運搬トラックが

指定の日時にそれぞれの農場まで来て

そのトラックのに、豚をスロープ(細い通路を作ってそこに豚を誘導しトラック内へ導く)

などを利用して積み込む形になりますが

私は農協を利用しないので

違う要領での運搬となります。

私は、まず

トラックを民間のレンタル業者から借りてくるところから始まり

そこに自分の育てた豚を乗せて

運ぶことになります。

乗せるのも

運ぶのも

当然自分一人です。

 

今月、WWOOFERが手伝いに来てくれています。

フランスから2週間

日本全国を旅しながらいろいろな体験をするために

ワーキングホリデーを利用して来日をしている

若い、カップルです。

この二人に、豚をトラックへ積み込む作業と

運搬のための輸送を手伝ってもらう予定です。

さてここで

どうやって彼らに

この日本における制度と

私が行っている積込みや運搬の要領を

説明したらよいか?

まずは手伝ってもらえるか?お願いをしてみることにしました。

答えは、「No problem.」で問題なし(笑)

但し彼らも「どうやって運ぶの?」「それは難しいか?」など

不安がいっぱいです。

当然、わたしがほとんどの作業を行うわけですので

いつものことなのですが

手伝う側としては、そうはいきません。

特に海外の方たちは(日本の方々もですが)

説明を求めます。

しっかりと自分の責任を自覚し

納得したうえで行動を起こす方が多いのです。

そこでこの豚の積込み、運搬要領の説明になったという次第です。

 

 

私が使用する道具たちは

まず

①檻り

②ロープ

③乾草

④レンタルトラック1.5t

⑤トラクター(バケットにホークをセット)

となります。

まず

①の檻りですが

単管パイプを組んで約100㎏~200㎏の豚たちを2~3頭

乗せられるぐらいの大きさのものを頑丈に作成しています。

ポイントとして、内側の壁面及び下面には12㎜で厚めのしっかりとしたコンパネを使用し

少しでも隙間があるところは補強用の板や材木で補強しています。

彼らは鼻先が少しでも引っかかるといとも簡単に穴をあけてしまうので

ココには注意が必要です。

彼らの圧力はとても強いので必ず

骨材の内側に材を組まないといけません。

併せて安全用に檻の外側からも補強材で補強します。

豚が暴れたりしたときに壁が壊れないように

どこに力がかかるのか?を考えながら太い木材を組み補強をしています。

上方は飛び出し防止用として単管パイプを柵のように組んでいます。

壁面があるので上方から脱出しようと試みる為、これはとても重要です。

ここは木材などで作ると壊されてしまいます。

しっかりと単管パイプを組み上げた方が安心です。

檻の入り口は落とし扉を作り

ロープで吊り上げておいて

豚が檻に入ると

ロープを持った手を放し

ドアが重力で閉まるように単純な仕組みを作っています。

ココも引っ掛かりがあったりすると事故の元ですので

豚を積み込む際は事前に何度か予行を行い

スムーズに落とし扉が閉まることを確認しておきます。

②のロープは

落とし扉用です。

私が使用するロープは登山用として使用できるもので代用しています。

(鹿猟の際に使用する為です。)

登山用ロープは

大きく2種類あり

簡単に言うと

伸びるタイプと

伸びないタイプに分かれます。

伸びるタイプのロープをダイナミックロープ

伸びないタイプのロープをスタティックロープ

それぞれ特徴があり

ダイナミックは伸縮性がある為、落下などの大きな衝撃を吸収できるように設計されており

逆にスタティックは引っ張った時、伸縮しずらい為直接作用点に力がかかり無駄なく作業を行えます。

それぞれに利点と欠点を備え

用途に応じて使い分けるのが一般的です。

ロープの太さはさまざまメーカーなどで定められていますが

8㎜の物を10メートル程度に切って使いやすいものを一本持っておくと山歩きの際はとても便利です。

私は8㎜でスタティックの物を一本何にでも使っています。

とても汎用性が高く使用頻度が高いアイテムです。

伸びが少ないので落下扉の吊り下げにも使用しています。

高価なロープをわざわざ買う必要はありませんが

山が好きな方は、一本持っているととても便利です。

③乾草

これは防寒用、敷き藁

食用として

檻の中にたくさん入れておきます。

中に入った豚は乾草があると安心して

落ち着きます。

④運搬用トラック

トラックはレンタルで借用します。

購入すると何百万円と初期費用が掛かるとともに

維持費がかかります。

保険代、税金、毎年の車検代などなど

維持コストがとても負担が大きい。

その為、購入はしません。

その分、借りに行く手間やレンタル費用はかかりますが、月1万5000円で保険、車検なども不要ですし

その他の用事を絡めてレバレッジを利かした運用をすれば時間的コストは削減できると考えています。

⑤最後にトラクターです。

これはフロントローダーのバケットにホークを溶接してつけたものを使用します。

特に、難しい改造ではありません。

昔は多くの農家さんがこのタイプを使用しており、使用していないトラクター用のホークが沢山あります。

私はこのトラクターを使用し檻を吊り上げ

トラックに積み込んで運搬をします。

トラックに積み込む際、技術が必要になりますが何度か練習すればできるようになり特殊な技術ではありません。

私が使用するトラクターはとても古く「コマツインターナショナル」製の474というトラクターを使っています。

これはその昔、日本メーカーのコマツとアメリカのインターナショナルハーベスタ社が合同で作ったもので

現在は存在しない会社です。

昔のトラクターは後輪駆動の2輪駆動が多く

四輪駆動の機能はついていません。

トラクターを運転する際、注意しなければならないことが2点あります。

一点目は横軸の傾斜にとても弱いという点。

二点目はフロントローダーで重量物を運搬した際です。

トラクターなどのいわゆる特殊車両は乗用車などと比べ

サスペンション機能が十分でない為、横軸への対応ができません。

車高も高い為、左右に傾斜がある場所だと、下手をすると横転してしまいます。

トラクターの横転事故はとても多く起きています。

特にフロントに重量物を保持して運航している場合は注意が必要です。

車体にねじれ運動が発生し駆動部に横軸への力が働きます。

横転すると圧死などの事故につながります。

傾斜、特に左右に傾斜がある場所での使用は十分な注意が必要です。

また、フロントローダーをつけてバケットなどで除雪や乾草ロールなどの重量物を運ぶ際は

トラクター後方にカウンターウェイトと言われる重量物を付け

車体重量のバランスを調整する必要があります。

フロントサイドが重くなると後輪が浮いてしまい車両の操舵ができません。

後輪が浮いてしまうと操舵もできませんが前後への移動も当然できなくなります。

少しの傾斜で身動きが取れなくなります。

これも下手をすると車体にねじれの力が働き、横転事故につながります。

上記2点は特に注意が必要です。

トラクターの破損だけでなく死亡事故につながる危険があるからです。

その他、注意する点として

トラクターの特殊機能の一つ

左右ブレーキが別々に使用できるという特性があります。

ロックレバーで簡単に左右分けてブレーキが使用できるように設計されています。

これはその特性上、必要な機能の一つではあるのですが

意図していないときに左右ブレーキが別々に機能すると

片輪のみロックしてしまい

横転事故につながります。

これも運行前には点検し注意する必要があります。

上記5点の機材を使用し

豚の移動、運搬を行こなっています。

 

豚はとてもフレンドリーな生き物です。

社会性もあります。

当然、人を認識しています。

ちゃんと安全か安全ではないかを判断して

行動できるとても賢い動物です。

わたしが畜産公社でよく見かける光景は

大型トラックに何十頭と豚を積んで出荷しに来る業者車両です。

特に、自家農家で運搬せず

輸送業者に依頼する場合が多い為

生産は、生産者が、運搬は運搬業者がと分業され効率的ではあるのですが

そこには、生き物として扱うという配慮に欠ける場合があります。

生き物ではなく、一荷物と化してしまいます。

運搬者は、運搬して、卸すのが任務です。

それは日々仕事の一環でしかなく

無駄なく、早く仕事したい。

それも理解ができます。

しかし

その為、電気棒(スタンガンのような仕組み)を恒常的に使用し

豚をショックで怖がら自由に動かせると勘違いる場合がとても多く散見されます。

屠畜場に到着すると豚の悲鳴が響き渡っています。

それを聞いて、私の豚はおびえます。

背中を丸め尾を巻いて恐怖しているのがすぐにわかります。

他社の豚は電気で追い立てられパニック状態です。

そんな光景を幾度となく目にします。

豚は電気ショックで自由に動かせません。

それは断言できます。

痛みと恐怖で自由に操作ができると考えるのは浅はかな行為であり

愚かな考えです。

人が豚を自由に思いのままにコントロールすることなどできないし

繰り返しますが本当に愚かな考えです。

私は、豚の特性をつかみ

彼らが動きたいと思うように環境を整え

彼らの意思で行動するように常に心がけています。

そのことをWWOOFERには一番重要なこととして伝えます。

他のことはテクニック的なことであり重要ではありません。

安全さえ確保できていればどんな方法でも良いのです。

しかし、豚の扱いについては

彼らの意思で動くように

しっかりと豚の特性を教えます。

繰り返しますが豚はとても賢い動物です。

知能は犬以上で、人間の三歳児程度の能力があるといわれています。

力で支配するのではなく

自分の意志で考えて行動さる。

無理なく、時間をかけても良い。

ペットではなく

一動物同士として

上下関係をしっかり構築し

生れた時から

その関係性を作り上げていく。

自然と豚たちは、自分の意志で行動します。

これがとても重要なことだと考えています。