農場づくり 手作り農場/電気柵/心理柵/ホークの話
モリマサ農場でいま考えること
モリマサ農場の玄関
エントランスではまず
羊のエメとピエールが出迎えをします。
車が農場前に止まると
〈めぇー!)と、まずエメが鳴き
ピエールが止まってじっとこちらを見つめます。
入口には小さな
「MST Lab」とかかれた看板を置いています。
置いているというのは本当に土の上に立てかけているだけだからです。
MST LabのMSTは、モリマサ商店の文字遊びです。見る人は意味が分からないけど
アルファベットの並びが良いので。(笑)
そして自分の中での実験室のイメージ。
本当に小さな看板で
板をメタリック系の黒で塗り
その上に白の中抜きの文字で自分で描いたシンプルなものです。
ゲートは木製でも鉄製でもなく
電気線用の鋼線をくるくる巻いたばねの様なゲートスプリングで
何の味気もありません。
農場を始めるにあたって飼養管理規則上、害獣、野生獣との境界として農場を壁や柵で囲わなければいけない
という規則があることから、柵でこの広い農場を囲うのは到底無理だし
そもそもそんなことしても、鹿などの野生獣はどんどん入ってくるだろうと。
何千万円と予算をかけてあちこちで農家が国の補助金を使い金網柵を作っているのを見ていますが
普通に鹿たちは中に入っています。たまに引っかかって死んでいる個体もあるとよく聞きました。
そんなことから
無駄なことはせず、わたしたちは電気柵をぐるっと一周張り巡らせることを選択しました。
その端っこにしたのが入口のゲートです。
鹿にはあまり効果はありませんが(笑)
あるものには非常に効果がありました。
まさに副産物です。
それは人間です。
わたしたち農場は、少し住居と離れた場所にあるため
どうしても不在の間が多くなりがちです。
農場の開業当初は近所の農家や話を聞きつけた人たちが
偵察がてら
「なんかよそからきて始めたらしいぞ」
「わけのわからないことをやっているらしいぞ」
と噂になり(笑)見に来る人が多くいました。
しかし
電気柵がしてあります。
電気は通していたり通していなかったり(当時はほとんど通っていない)ですが
電気柵があると、人は入ってきません。
学習して、知っているからです。触るとビリっ!!とショックが来ることを。
このショックはわたしは残念ながら何度となく味わっていますが(メンテナンスなどの作業をしていて致し方なく)
相当激しい。心臓を突き抜けて肩あたりまで来ます。そしておもわず「あ!!」とか「が!!」とか
叫びにもならない声が出てしまいます。ひどいときは首まで衝撃が来て
数日、痛むこともありました。
私の使用しているメーカーのものは1.5秒毎に電気が流れるもので
感電のリスクは少なく設計されていますが、やはり心理的に怖いものです。
人は、特にこのあたりの人たちは日常的に電気柵を見る機会が多くある為
何らかのカタチで学習しており
電気が通っていなくても柵に触ることができません。(笑)
面白い副次的な効果です。
私たちがいてゲートが空いていると
ズカズカと入ってきて
世間話をしつつ農場内を物色していましたが
電気柵は効果テキメンで人間阻止には役に立っています。
「どうも!今ゲートを空けますね!」と誰かが来たら
私たちがゲートを開けますが
まず一言目に
「電気はいっているの?」と質問が来ます。
返しとして
「今は」はいっていませんよ!です。(笑)
そんなこともあり
無味無臭な何の飾り気もないゲートになってしまいました。(笑)
エントランスを抜けると
ここからはモリマサ農場の世界が広がります。
本当に手作りの小さな農場です。
入口入って右手にD型の倉庫があります。
そこがすべての拠点になります。
倉庫内は大きな乾草ロールが奥に積み上げられ
500㎏の餌袋が数袋
60歳近いトラクターが中央に「どん」と腰を据えています。
今まで廃業した農家からの頂き物や自分でそろえたありとあらゆる道具たち
母豚が出産時に使う柵(2頭同時に出産できるくらいのスペース)
ニワトリ小屋。
メンテナンス器材や
木材などの材料。
特に木材はほかの人が見れば何に使うんだろう?と思うような木材も
それぞれサイズごとに大まかに分けて集積してあります。
このちょっとした木材がとても役に立つからです。
少しの木材をいちいちそのたびにホームセンターなどで購入していたら仕事になりません。
こんな物つかうのか?というものも残しておくとあとで「あ!」「ちょうどいいのがあったわ!」
となるのです。
そして
ひとつひとつの道具や木片に
思い出がびっしりと詰まっています。
配置を考え
何が必要なのかを一から考え
ひとつづつ
少しづつそろえてきた道具たちです。
本当に今では宝で
それぞれ農場作りに際して奮闘してきた戦友たち
思い出が沢山詰まっています。
子供たちとの思いで
パートナーとの思いで
手伝いに来てくれた多くの方々との思い出が
本当にぎっしりと詰まっています。
一つのものをできるだけ大切に
長く使用する。
そのために自分でそろえたものは(ほとんどは貰い物ですが)
出来るだけ良いものを購入しました。
その中のいくつかを紹介したいと思います。
みなさんはホークをご存じでしょうか?
正式な名前を私は知りませんが
私たちは「ホーク」と呼んでいます。
ショベルの柄の先に食事で使うホークの様な3~4本ぐらいのとがった鉄の部位が
ついており
乾草を積んだり卸したり集めたりするための道具です。
豚を育てるには乾草がとても重要です。
イギリスでは豚は乾草で育つ。と言われているほど。
敷き藁と言って寝床に使ったり
それを食べたり。
特に彼らは捕食要求が強く餌をたくさん食べ早く大きくなるように改良され続けてきました。
「いつでも食べたい、、口をモグモグ動かしていたい」」
常にお腹がすいているように感じるのです。食べたい欲求ですね。
その様に長い年月をかけて改良されてきました。
沢山食べて早く大きくする事が人間にとって効率的で大事だからです。
乾草を豚に与えると
本当に犬のように喜びます(笑)
餌とはまた違う反応です。
これは本当で、まさに飛び跳ねて喜びます。
嬉しいんですね。
毎日豚たちの顔をみていれば一目でわかります。(笑)
本当にうれしいときは嬉しい顔をするのです。
逆に悲しいときは、本当に悲しい顔をします。
表情がとても豊かな動物なんですね。
この柄の短いホークが2本。
柄の短いホークは、この地方のホームセンターなら大抵置いてあり、普通に購入することができます。
これとは別に柄の長いホークがさらに2本あります。
この2本は廃業した農家さんからいただいたものです。
普段はこちらをメインで使用しています
なぜか?
こちらのほうが断然使いやすいからです。
重量、長さともにとても使いやすい。
研修先で短いものしか使ったことが無かった私は
この、柄の長いホークのことを知りませんでした。
当時、パートナーが柄の長いホークがあってそっちのほうが断然使いやすいんだよ!って
教えてくれたのを覚えています。
たまたま一本いただいた柄の長いホーク。
それを取り合いしながら二人で作業をしました。(笑)
それぐらい、使いやすい。
でもホームセンターなどには販売していません。
どこで買えるのでしょうか?
今でも販売しているところは見たことがありません。
ほんのちょっとしたこと、ちょつとした工夫が
作業の効率や疲労度にすごく影響するということを
改めて痛感しました。
今では2本ある柄の長いホーク。思い出がたくさん詰まったホーク。
それはおそらくいただいた農家さんが何万回と使用し
その方の想い出と苦労が詰まっているのだと思います。
柄の部分が使用により少しくぼみつるつるとしていて
本当に使い込まれた、シンプルだけど、とても良い道具です。
ホークは毎日欠かさず使う道具だから
とても大事なんです。
大好きな道具の一つです。