養豚に必要な要素 飼料
さて
養豚には必要なものがあります
それは
餌
当たり前ですが、とても大事です。
配合飼料を購入するのか
粗飼料として麦、大麦、大豆、コーンなどのように
別々に種類、生産地などがわかるものを購入し
自分で栄養価を考え自家配合し給餌するのか?
そこからもう一歩踏み込んで
豚は雑食
牛は草食
羊も草食
鶏は雑食
豚の特性を利用して
人が利用しないものを活用する。
副産物の活用です。
例えば、学校給食の残り廃棄
レストランの廃棄
ご自宅で出る残飯なども含まれます
また、それに加えて
畑作農産物の廃棄
これは、規格外商品(形が悪い、大きさが悪いで味や成分に商品との違いは無いもの)
工業生産物の廃棄
これは、製麺所で作成される麵
パン工場で生産されるパン
ビール工場で生産されるビールを絞った大麦モルト
など多くのものが廃棄され、産業廃棄物として廃棄料を払って処理されています。
昔から、アジアの特定の地域では人家の下に豚を飼い
人から出る廃棄物を餌として与え
日本でも残飯を鍋で炊いて豚の餌にしていた時代がありました
各農家で自前の豚を数頭購入し年末に自家と畜をして
お肉をふるまう
そんな文化が農村文化にあったんです。今でもその頃の話を古い農家さんからよく聞きます。
人が使用しない食材で豚は大きくなる
飼料要求がたかく(いつも何かを食べたくて食いしん坊)
なんでも消化できる強い内臓と腸内環境をはぐくみ
長い歴史の中で形を変えながら現代にいたるまで
遺伝子が受けつがれ、また家畜という形で残り、
あわせて人の手で改良されてきたのですね
これら副産物を活用するのは
養豚における飼料を考える上でとても大きなことです。
これらの配合バランスを考え
副産物を混ぜることにより
飼料調達経費をできるだけ削減し
健康で大きく
美味しい豚を育成していく。
そしてもうひとつ
これは数少ない考え方だと思いますが
野生と同じく
野山で放牧し
草、木の根、キノコやミミズなどの生き物などを
自家採取させ生育する
野生のイノシシとおなじですね
これらの4つのバランスをとりながら
どのような豚肉をつくるか
が養豚における飼料の考え方だとおもいます。
これ以外にも方法はあるのかもしれませんが、これらが私の知る限りです。
それでは、モリマサ農場「青空養豚場」は
いかに?
をお話しします
まずは配合飼料
これは使用していません。
理由は、何が含まれているかというよりどこでどのように生産されたものなのか
どのように保管され、どのように輸送され、どのように保存され
いつ採取されたものなのか?複雑すぎて私の範囲を超えています。
そこから想像されることは(あくまで想像の範囲です)
遺伝子組み換えであったり採取時期であったり防腐剤の大量使用であったり
生産時の農薬使用であったり、保管時の状態など
これらが納得できる形で理解できないという理由で使用していません。
また、価格の問題もあります。輸入穀物を多く含むため価格安定性にかけ(海外の情勢に左右され)
私にとっては高いと感じるのです。
しかし、メリットは栄養価、栄養成分を考えられ?豚は早く大きくなる。(家畜全般、豚の内臓など体への影響、健康は考えられていない気がする)
これらの理由で配合飼料は避け
粗飼料として、単体で配合されていない飼料を選び、できるだけ国産
私は、国産小麦の規格外を購入してベース飼料としています。
特にそのまま小麦では外皮が硬く豚は消化できません(そのまま便ででてきます)
栄養として吸収されないため、開業当初は、大鍋(寸胴鍋を3つ購入)で毎日2回炊いて給餌していました。
その為の燃料代と、もっとも不効率だったのは時間を浪費したことです。(1日の大半を餌づくりに使用していました)
現在では、熱処理後、圧力処理されたフレークタイプになったものを購入しています。
価格は、安くはなく、70円/1㎏程度をやや上昇傾向で推移しています。
20㎏の袋単位でも購入できますが
500㎏のフレコンパック(大きな1トン土嚢)での購入がややお得です。
但し、運送、運送後の運搬に制限を受ける為(重量が重く、当然人力では動かせません)
機械力
トラクター、ユニック、ホイールローダーなどが必要になります。
青空養豚場の頭数(前年度は約30頭)だと1ヵ月に500㎏を使用する為
約35,000円となります。
私は、フロントローダー(前にバケットが付いたもの)付トラクターにホークをつけて
リフトして運搬しています。ホーク取付部位は自前溶接です。(どこかで写真を掲載します)
次に
副産物
(上記写真は畑作規格外品のカボチャ、カボチャはみんな本当に大好きです!そのまま丸ごとムシャムシャ(笑))
私の農場は、オカラ、製麺、鰹節、ホエー、お米、野菜(白菜、キャベツ、パプリカ、カボチャ、ジャガイモ、ニンジンなど時期に応じて)
また、ビールを絞った麦芽モルト(大麦)及びチーズを絞った後のホエーがメニューとなります。
これらを、配分を調整しながら
豚の成長を観察しつつ配合量を調整しながら
栄養士のごとく(笑)
シェフのごとく配合しています。
(上記写真はオカラ、一袋約20㎏程度 週に2回約40㎞離れた事業所様へ回収に行きます。)
メリットは、廃棄物が主体ですので基本無料です。
人が食べる食材の為、栄養価、成分、作り方が見え比較的安心して使用できます。
デメリットもあります。当然表裏一体です。
その一つは「回収作業がある」です。
畑農家、事業所がそれぞれ地域に点在していますので
それを回収するため
移動時間
車両レンタル費用(軽トラで運べるものは必要なし)
燃料代がかかります。
特に、移動時間と燃料代は問題でボディブローのように経営に影響を与えます。
無料(ただ)ほど高くつくものはありません。
2つ目は「量、時期が安定しない。」です。
当然ですが
各事業者は廃棄物を作りたくはありません。
これはどこも共通で企業努力をして減らしていこうと考えています。
生産量を調整し無駄をなくす。
それでも出てしまう副産物です
廃棄料が安定しないため
全然、無かったり
突然、積み込めないぐらい大量に発生したり
(一度、大量発生した製麺を使用しきらずこちらで廃棄料をつかって100㎏程廃棄しました。)
突然、明日でるよ!とか
予定が未定な点です。
時期は事業者様と当然調整しているのですが
それでも生ものです。
全て決まった日時に受領とはいきません。
こちらである程度はコントロールできるのですが(受領日を決めて保管しておいてもらうなど)
夏場など時期により腐敗する場合がある為、なるべく直ぐに回収を心掛けています。
3つ目は保管です。
副産物は乾燥穀物飼料とはちがい
「生」または、水分を含んだ状態のものが多く
夏場は当然腐敗します。
保管は課題の一つであり大きな問題です
魚のガラや残飯などは当然保管できませんので回収しても当日使用
併せて加熱処理が必要になり大きな労力上の負担になります。
当然、加熱燃料費用が経費計上されます。
モリマサ農場(以下、青空養豚場)
は水分含有量が多い副産物の回収はしていません。
上記記載が主な理由で効率性、当然衛生面でも管理が難しいからです。
そうそう衛生面の話。
青空養豚場では飼料は大きなD型倉庫内に置いてあります。
全てプラスチック製の箱(小から大)に入れ蓋ができるように工夫をしています
これは、
ネズミ、カラス対策
駆除をしてもどうしてもネズミは居ます
太古の昔よりネズミがいなくなることはありません
人がいればそこにネズミとカラスは存在する。
要するに食べ物があるということです。
猫のコテツが交通事故で亡くなって以降
気を付けてはいるのですがチョロチョロ出てきている形跡があります
これは、姿を見なくても毎日作業をしていればわかります
あとはカラス
倉庫の入り口の大扉を作業中は開けている為
カラスはちゃんとそのことを知っています
餌がある場所も掌握済み(笑)
青空養豚場には5~6羽のカラスの家族が住み着いていて
豚にあげた餌をつまんだりときどきいたずらをします。
その為、餌箱には必ず蓋が必要です
彼らはとても賢いのであなどれません。
少しのすきを見て必ずいたずらします。これは絶対です。
ネズミ対策として猫(今は居ませんが)が有効です。
我が家の猫、コテツ亡き後は、捕獲用わな(箱型)を3つ設置して
獲れるたびに処分しています。
私は、水の中にそのまま放置で溺死させています。可哀そうですが衛生上共存は考えていません。
カラスは扉の開け閉め、「必要のないときには閉める」の基本の徹底
入口大扉にネットをつける。
餌箱や、つつかれたくないものには蓋をする。
そして一番大切なこと
「こぼれ餌を作らない」です。
これは、前述したように餌があるところにそれに見合った数のカラス及びネズミは生息する。
なので彼らが食べれるものを置かないことです。
豚の餌は残置餌(与えた餌で食べきれなく残すもの)が出ないように量を調整し
カラスやネズミの餌になる分量を出さない。
これは大型農場などで大量に餌を機械力で給餌しているところは実施が難しく(そもそも考えているかはわからない)
大量にバケットローダーなどを使用してパドック内のある一定の場所に餌を配る為
どうしても残りえさが出て腐敗しそれを有害鳥獣が食べに集まるという負の連鎖。
各農場は大量のカラスが生息し駆除に苦慮しています。
その為、カラスにも有害鳥獣駆除の許可と補助経費が各自治体から出ており
各農家は駆除をしつつ農場の衛生環境を守る、ということをしているのが現状です。
青空養豚場では、カラスは一家族のみで
猟銃(上下2連散弾銃)などで駆除も可能ですが
他の牧場と違い、こぼれ餌を作らない為、大量に生息しておらず、カラス駆除はしません。
話が少しそれましたが
副産物の水分含有量は大きな問題で
出来るだけ水分を含んでいない副産物を回収し飼料として再利用しております。
しかしながらオカラ、出汁を取った後の鰹節、ビールを絞った後のモルトなど
水分を少量ですが含んでいるものがあります。
これらをそのまま容器に入れ保管すると、1日、早ければ半日で腐敗がすすみ
異臭と共に使用できない状態になります。結局廃棄です。
私たち青空農場は、これを防ぎ有効に利用する為
「発酵」の力を使い餌として利用できるようにひと工夫しています。
発酵と腐敗は表裏一体
発生する菌の違いにより腐敗にもなり発酵にもなる
発酵は栄養価も高め保存も効き
そして何より美味しい
腐敗は異臭と溶解でどろどろになり
とても使えるような状態ではありません。
発酵には2種類
嫌気性の発酵と
好気性発酵があります
嫌気性発酵は酸素が無い状態で菌が生成する発酵
好気性発酵はその逆です。
例に出すと
嫌気性はヨーグルトなどの乳酸菌による発酵、空気に触れることを嫌います。
好気性発酵は米糠などを混ぜて作るぼかし肥料などがその例です。
嫌気性発酵のメリットは攪拌作業が不要であること
ゆっくり発酵が進むため環境負担がすくないこと(発酵過程でいろいろな成分が作られ空気中に放出される)
デメリットは空気の遮断が難しく、望んだ菌と違う菌が発生し腐敗しやすいこと
好気性発酵はその逆です
空気と攪拌する作業が必要になること(量が多い場合、機械力や施設が必要になってきます、経費の初期投資が大量に必要です。)
短期間で高温になり熱、ガスを発生させること
水分を調整する必要があることなどです。
酪農でよく使用されるサイレージ発酵
これは、嫌気性発行を利用したもので乳酸発酵させ刈り取った牧草を発酵食品に変え牛に給餌する方法です。
青空農場ではこれを応用し
大型のプラスチック製容器に副産物を充てんし
圧力をかけ空気に触れないようにして上からラップをかけ
重しをのせる。
そして乳酸発酵を促し保存性と栄養価を高める
この方法を採用しています。
これらの作業はすべて手作業
出来るだけコンパクトに作業者の負担にならないよう
大型プラスチック製の容器も200リッター程度
圧力は手で押し付けて空気を抜き
ラップはビニール袋を密着させてかぶせ空気に触れさせないように木っ端木材などで四隅をおさえ
その上に石ころなどお置いて重しにしています、漬物とおなじですね
そこまでミリミリしなくても乳酸発酵し(たまに失敗しますがほぼ大丈夫です(笑))
甘酸っぱい、甘酒のような香り(本当に美味しそうです)
しっかりとしたサイレージ飼料になります。保存性はもちろん向上しますし
栄養価も発酵によりビタミン、ミネラル分が増加します。
菌の働きって本当にすごい
殺菌により菌を殺すのではなく
上手く付き合うほうが自然で無理がありません
この世の中から菌をなくすなんてほぼ無理ですよね
共生は本当に大事です。人が自然に挑んで勝てることはありません。
しかしながらここまで来るのにたくさんの失敗をしました。
こんな単純なことに
苦労して苦労して何度も何度も失敗し
餌を無駄にし、廃棄料を無駄に使い
ようやくたどり着きました。(笑)
はじめは攪拌して好気性発酵に挑戦(鶏の餌の動画を見て)
腐敗し本当にうんこみたいな悪臭と溶解してどろどろに
冬の厳冬期
凍り付きショベルで刺しても刺さらないし氷よりも固く砕けず使用できない。
チェーンソーで切ってみたり(笑)ありとあらゆることを試みました。
現在では
冬は夜間、家畜用ヒーター一つを上からぶら下げ(火災には十分注意が必要です)凍り付かないようにしています。
これで何とか1年を通し水分を含んだ副産物を腐敗させず凍り付かせず
使用でき栄養価を高め経費削減にもなり有効な飼料として活用できるようになりました。
YouTubeで小さな馬農家さんがオカラをこの方法で利用しているのをたまたま見ました。
「あー同じことしてる!間違ってなかったんだー」
って感動した記憶があります。